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調査研究方法検討会 かわら版

■ 第56回調査研究方法検討会かわら版 ■

 去る2013年,7月6日(土),7日(日):ステーションコンファレンス東京(東京)にて,第56回調査研究方法検討会が開催されました.場所の設定・準備について宮田章子氏,加地はるみ氏のお世話になりました.また,今回,宮田章子氏のお世話にて,三品浩基先生による臨床研究と倫理に関するレクチャーも開催されました.検討会の報告要旨は,各演者の方へお願いしております.ご発表いただいた研究の概要とともに検討会で議論された内容も含めご報告いたします.
 

 6日(土)
「2012ー2013年インフルエンザ流行.東京都N区学級閉鎖状況分析」 沼口俊介
 2012〜2013年の季節型インフルエンザ流行は全国的に小規模で終息したが、2009〜2010年の新型インフルエンザ流行時と比較し学級閉鎖状況を分析し検討することは今後の地域での感染症対策を考える上で重要と思われる。調査目的:1)2009年ならびに2012年流行時の学級閉鎖を比較し問題点を明確にする 2)学級閉鎖時の因子(欠席率、疾患罹患率、閉鎖期間)を基本として今期の経時的、空間的推移を分析。調査対象:N区区立5幼稚園、64小学校、24中学校 調査期間 平成24年12月1日〜平成25年3月末日。 調査方法:1)記述疫学による解析 2)教育機関の郵便番号利用したクラスター分析、バブルプロット法、一元配置分析(統計ソフトJMP08)用いた分析疫学による解析。結果:学級閉鎖は3群に分かれ、罹患率の高い群の2ケ所から疾患が拡大していく傾向が観察された。考察:今回は郵便番号にて空間的推移を考察したが今後は緯度、経度による分析ならびに後方的検討でなく症候サーベランス利用した前方視的考察が出来る仕組みを検討したい。
 
「日脳接種時のワクチン接種率」 橋本裕美
 公的接種のワクチン接種率は比較的容易に把握できるが、任意接種においてはワクチンの出荷数からの類推程度で、正しく現状を把握することはむつかしい。ムンプスや水痘ワクチンの接種率の現状を把握するために、クリニック受診者の母子手帳からデータを得る方法を考え、今回日脳ワクチンのため受診した3〜4歳の小児、連続した20名を対象に調査した。近畿の有志14施設の調査結果を紹介した。しかしこの手法では日本脳炎ワクチンに受診するというワクチンに積極的な家庭に対象が偏るというバイアスが大きく、参加者から就学児検診のデータや、乳児検診の際の調査などの方が偏りのない結果が得られるだろうと意見が出された。
 
特別講演「研究デザインの基礎と倫理的配慮 」 三品浩基先生(1.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系医療疫学,2.国立成育医療研究センター総合診療部)
 臨床研究のデザインは、大きく介入研究と観察研究に分類できます。研究デザインのタイプによって倫理的配慮のポイントが異なることに注意が必要です。倫理的に逸脱した臨床研究は、対象者の健康に危害を及ぼすだけでなく、臨床研究の社会的信用を損なう可能性があります。人体実験スキャンダルとなった過去の幾多の事例が、ニュルンベルグ綱領、ヘルシンキ宣言、ベルモントレポートなど、主要な研究倫理規約を発展させる動機となりました。
 現在の臨床研究は、事前に対象者の保護について計画し、プロトコール(研究計画書)にその内容を記述することが求められます。とくに、インフォームドコンセント、個人情報の保護、利益相反の管理には綿密な配慮(本邦の医学研究に関する倫理指針を参照)が必要です。そして、倫理審査委員会などの第三者によるプロトコール・レビューを通して、倫理的配慮の適切性を検討します。これらは介入研究、観察研究などの研究種別を問わず、研究実施前に遵守すべきプロセスです。
 さらに、倫理的課題は対象者の保護にとどまらず、研究者によるデータの捏造、改ざんなどの不正行為、論文公表時のオーサーシップにも及びます。論文の著者は、研究内容に公的責任を負うという認識を持たなければなりません。倫理規範は時間の経過とともに変化し続けるものであり、その時代にあった倫理規範を遵守する姿勢が必要です。
 
「乳児期の皮膚管理による食餌アレルギー回避の可能性について」 西藤成雄
 やむをえず鶏卵などの摂取制限を指示している乳幼児はいるが、そのほとんどが、他院でRASTにより食餌アレルギーと診断され早期から除去食を指導されている。湿疹などの皮膚症状も伴い、その治療にはW群(Mild)外用ステロイド剤(ス剤)、ワセリンなどの保湿剤が使用されていた。
 当院において生後3-4ヵ月までに外用剤の説明を受け、ステロイド薬に忌避がないご家族の元で育ったお子さんには、食物によるトラブルが極めて少ない。
 ただし私の皮膚治療は、V群(Strong)ス剤が初期選択である。その理由は、アトピー性皮膚炎(AD)の治療について指導を仰いだ皮膚科医師らは、Mildス剤とワセリンなどによる接触性皮膚炎の経験を持ち、ス剤による十分な炎症管理を重視していた。そして食物が関与するADは経験がないと語っていた事を記憶している。
 昨今、小麦加水分解物含有石鹸による小麦アレルギーの発症する事が報告され、皮膚と食物アレルギーの接点が大きい事が示唆された。また早期からの除去食は食物アレルギーの発症を予防する事はできず、逆に増やす事実や、経口摂取が免疫寛容を誘導する研究結果も現れた。
 アレルギー疾患の治療に携わり20余年が経過し、気付くと皮膚科医と同様の経験を得ている事に気付いた。そして最近の研究成果で、その経験は説明しやすいと感じる。すなわち、皮膚炎のアンダートリートメント(管理不足)と、早期から免疫寛容の機会を剥奪(除去指導)が、食物アレルギーの発症に加担していると。そして一度確立した食物アレルギーの治療は困難である。
 臨床の印象で済まさずにエビデンスにしていくには、どのような方法があるのか、検討会で討議していただいた。


 7日(日)
「小児期(乳幼児・学童)における血圧の正常値と血圧異常の基準値に関する研究 -測定機器変更に伴うデータの統計的解析について-」 村上直樹
T.血圧測定法:測定原理
 一般的には水銀血圧計を用いて聴診法により測定するとされているが、周りの騒音を消すことが困 難な乳児健診や園・学校での検診の場では聴診法は再現性が低く、正確な測定は困難である。それ故本研究では、1992年より一貫してオシロメト リック(振動測定)法を用いて血圧測定を行ってきた。 同方法は非観血的血圧測定であり、事前設定した初期目標圧に応じて小児では160mmHgまでカフ圧を上昇させ、その後減圧が開始され、最高血圧・平均血圧・最低血圧および脈拍数が測定される。
 本法による血圧の測定値は、代表的な母集団を対象に動脈圧または聴診による測定との比較において、平均誤差と標準偏差については、米国電子・自動血圧計基準(1992年 /1996年)に定める範囲内にある。
U.血圧測定法:測定機器の変更
 1992年4月の開院以来2012年8月までの20年間あまりの間測定に使用した、DINAMAP PRO 300(GE Medical System)は2011年に販売を終了した。 2012年時点で、日本のみならず世界で広く採用され、販売実績が 一番のフィリップス社製の“ IntelliVue MP2 ”を採用することとした。
 本器はユーザーによる校正はできず、検定が必要である。カフ圧トランスデューサの確認は最低2年に1回、校正は必要に応じて、サービスエンジニアが実施する必要がある。
V.血圧の正常値
 2013年6月現在も、新生児や乳児の血圧の正常値は示されていない。「高血圧治療ガイドライン(2009年版)」では、正常高値血圧基準値は90パーセンタイルを目安に作成されている。小児の健診用の高血圧は95パーセンタイルを目安としている。低血圧基準値 は収縮期血圧が基準となり、5パーセンタイルを目安としている。拡張期血圧のみの低下は臨床的意義が乏しい。
W.計測機器変更に伴う影響
 結論としては、このANSI/AAMI:SP10の精度規格にGEのダ イナマップもPhilipsの生体情報モニタIntelliVue シリーズも適合しており、両社の測定精度は担保されているといえる。
X.統計的考察方法
 本研究の場合は,通常は厚生労働省認可の測定用具であるから,その妥当性(「血圧」を測定していて他の指標の混入はない)と信頼性(測定誤差 が少ない)は、その認可の時点で検証されている。したがって、少なくとも認可測定用具であれば、測定装置を変更したことによる数値変動のリスクの回避は担保されていると考えることが通常である。それ故研究のために測定装置の変更によって生じた数値変動は無視できると考えられる。
Y.まとめと考察
 測定機器の変更は、米国電子・自動血圧計基準または、日本の「計量法検定」合格済みであれば、測定値の測定結果としての数値変動は無視できるものと思われる。測定時の状況・時間 ・機器の設定が重要となる。つまり測定の条件を一定にすれば共同研究が可能となる。
 
「臍ヘルニアの治療方針に関する実態調査」 長田伸夫,鈴江純史,橋本裕美,富本尚子
 臍ヘルニアは、その多くは2歳までに治癒することから経過観察することが多い。しかしながらヘルニア治癒したが臍突出症となり手術を要することもある。その治療方針は大きく経過観察、臍圧迫法、外科手術となる。しかしながら治療方針は、各施設によってさまざまで、標準化したものは今のところない。外来小児科学会会員における臍ヘルニアの治療方針に関するアンケート調査を実施その実態を明らかにする。アンケート内容を討論いただき、研究計画をリサーチ委員会にて審査申請する予定である。
 
「水痘ワクチンの有効性の調査」 中村 豊
 前回の調査研究方法検討会での検討を踏まえて、調査用紙を作成しなおし、近畿外来小児科学研究グループ内で参加者を募り調査を開始した。6月下旬に中間報告を求め、18施設から209例の水痘症例が集まった。家族内感染の可能性がある兄弟は193人、内水痘の既往のないもの114人を今回の解析対象とした。また発端者が水痘ワクチン未接種の場合の兄弟は118人で既往のないものが57人であった。水痘ワクチン接種者16人中水痘発症者は10人、ワクチン未接種41人中発症は30人であった。未接種者から未接種者への2次感染率は73%でほぼ既報の通りであった。この結果よりワクチンの有効率を計算すると、14.6%となり、海外での有効率報告70−80%や国内でのアウトブレイク時の報告50%程度より低い数字であった。
 検討会では、総数をもう少し増やすこと。全国レベルで参加者を募るほうがいいのではないか。抗ウイルス薬の使用が感染率を下げているのではないか等の意見があった。またワクチン接種が2次感染を下げるのではないかという問題については、114人を対象として発端者がワクチン接種済みの兄弟57人中発症したものは22人、ワクチン未接種者の兄弟57人中発症したものは40人で統計学的有意で(p<0.001)、水痘ワクチンを接種したものが水痘に罹患しても、家族への感染率は低いということが証明された。しかしながらワクチン接種済み者の家族は、ワクチン接種済み者が多いことが予想できるので、補正の必要があるという意見が出た。今後近畿のグループ内での研究を続行し、8月いっぱいでデータのまとめを行う。
 
「臨床的特徴からウイルス性疾患を疑診する. - 精度の高いウイルス迅速診断キットの選択のために -,先行パイロットスタディー」 冨本和彦
各種ウイルス性疾患の迅速診断キットが小児の外来診療に与えた影響は大きい。しかし、疾患の流行期はさておき、流行前後の疾患散発期にはウイルス迅速診断キットの選択に迷うことも多い。臨床医はその経験から診療情報、所見を総合して診断キットを選択するが、この精度を向上させるために外来診療情報から各ウイルス性疾患を疑わしめるサインを検討した。
 今回はRSウイルスについて検討した。対象は2012.11月〜2013.6月に当院を発熱、咳嗽で受診し、RSウイルス感染症あるいはインフルエンザを疑い、いずれかあるいは両方の検査キットを用いて検査した3歳未満の児239例である。RSVキット陽性群を従属変数とし、コントロールをRSVキット陰性群、またはインフルエンザAまたはB陽性群とした。説明変数を性別、集団生活の有無、RSウイルスの流行情報の有無、RSウイルスの罹患歴、家族内の喫煙者の有無、発熱の最高値、咳嗽の好発時間(就眠直後、夜間就眠中、起床直後、日中)喘鳴程度、鼻汁、鼻閉、いびき、聴診上の喘鳴、鼓膜所見の有無、酸素飽和度とし、多重ロジスティック解析にてRSV陽性に関連する要因を検討した。
結果:RSV陽性群は74例、RSV陰性群は103例、RSV検査が未施行のインフルエンザA陽性群は24例、B陽性は1例である。RSV陽性と関連したのは、いびき(OR:1.80,95%CI 1.17-2.76, p=0.007)、聴診上の喘鳴(OR:2.48,95%CI 1.28-4.81, p=0.007)、日中の咳嗽(OR:0.66,95%CI 0.437-0.995, p=0.048)であった。
 Discussion:乳幼児にとって臨床的に問題となるウイルス疾患はhMPV,PIV,RSVの三者であり、この鑑別は重要となる。しかし、RSV迅速診断キットの感度は32-79%に過ぎず、RSV迅速診断陰性がRSV感染でないとは言えないため、RSV陽性群と陰性群の比較となると偽陰性の紛れ込みが問題になる。この点ではmultiplex PCRなどによるより感度の高い診断しかないが、コスト面に問題が生じる。また、臨床医がRSVを検査しようと思った理由は、喘鳴があったり、鼓膜所見があったりしたことからで、この時点ですでにバイアスがかかっている。RSV感染の臨床的特徴を浮き彫りにする目的なら、RSV検査の結果でなく、RSV(+)に対するControl群としてインフルエンザ群との比較などとした方がわかりやすい。
 説明変数に咳嗽、鼻汁、発熱の先行症状の検討も入れることとしました。
 
「小児期便秘の治療プロトコールの検討(第1報) 酸化マグネシウムとピコスルファート」 冨本和彦
 小児期の便秘は比較的多い訴えであり、その進展メカニズムからはプライマリーケアでの早期の対応が求められるが、これまでEBMに基づくガイドラインは国内では示されてこなかった。今回、本邦で多用される酸化マグネシウムとピコスルファートについてopen-labeled crossover studyにてその効果を比較検討する。
方法:対象はRome III criteriaによって便秘と診断された15歳未満の児。初診時に便秘のメカニズム、トイレットトレーニングについて動画を用いて説明する。この生活指導を継続しながら、2週間のコントロール期間を置き、この間の排便状況を記録する。投薬介入は酸化マグネシウムあるいはピコスルファートで行い、まずグリセリン浣腸(2ml/kg)を3日間行って便塊を除去したのちに3週間投薬し、排便状況を記録する。これを1クールとして一方の種の薬剤で1クール行った後に2週間の無投薬期間を設け、引き続いて他方の種の薬剤で2クール目を行う。この介入順についてはコンピュータでランダムに割り付けした。Primary outcomeは介入2週目の排便回数(回/週)とし、secondary outcomeは便性状をBristol scaleに基づいて点数化し、合計点数を評価した。また副反応の項目も評価した。酸化マグネシウム投与量は成人量を2.0g/dayとしてAugsberger 式に従って投与量を算出した。また、ピコスルファートは添付文書に従った投与量とした。
 Discussion:酸化マグネシウムとピコスルファートではいずれも便秘には効果的な薬剤であり、どちらも同等に有効、あるいはどちらかがより優れているといったデータを出すためにはサンプルサイズが大きくなりすぎる。Rome III criteriaで定義される便秘の児は比較的症例数が少なく、多施設共同研究でないとサンプルサイズを満たすことはできない。むしろ、酸化マグネシウムのみに絞って、コントロール群を整腸剤として効果を検討したほうがよい。しかし、整腸剤の便秘に対する効果はあまり期待できないため倫理面での問題が生じるおそれがある。酸化マグネシウムと整腸剤とのCrossover studyとすれば、倫理的にも問題は少ないかもしれない。また、 薬剤投与量について酸化マグネシウム投与量が少なすぎるのではないか?通常0.05g/kg/dayとしている。
 一日に複数回、多様な便性状の排便が認められた時のBristol scaleに基づいた合計点数はどうなるのか?


連絡先:〒833-0027 福岡県筑後市水田991-2杉村こどもクリニック 杉村 徹
FAX: 0942-52-6777 , E-mail: sugimura@kurume.ktarn.or.jp
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