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■第65回調査研究方法検討かわら版■

去る2016年,7月2日(土),3日(日)丸ビル別館(大阪)にて,第65回調査研究方法検討会が開催されました.場所の設定や準備について西村龍夫氏のお世話になりました.検討会の報告要旨は,各演者の方へお願いしております.ご発表いただいた研究の概要とともに検討会で議論された内容も含めご報告いたします.

日(土)

○「インフルエンザHAワクチンの2回接種は全小児に必要か?」

鈴木英太郎

インフルエンザHAワクチンの2回接種が13歳未満で実施されている日本の現状について実際に必要かを調査検討した。調査検討会で途中経過を報告してきたが、この度論文投稿にこぎつけたので最終報告とする。3シーズン総被験者数は386名である。分析方法は有効抗体価の経時変化パターン及び対数抗体価の経時変化の2つの方法で検討した。結果は、2つの方法ともに同じ結論であった。1〜3歳未満は2回接種でより高い抗体価が得られるが、3〜6歳、7〜12歳では1回接種と2回接種に抗体価の差はない。抗体保有率は、年齢層が上がるほど高かった。結論:1〜3歳未満は2回接種、3〜6歳は前年度ワクチン接種者は1回接種、7歳以上ではワクチン接種の有無にかかわらず1回接種でよい。

○「プライマリ・ケアにおけるロタワクチンの効果の解析について,ワクチン接種児と非接種児の比較検討」

青木才一志

ロタワクチン導入により入院例の減少は報告されているが、一般外来での臨床効果の報告は少ない。当院では2014/15年と2015/16年の2シーズン連続で地域的流行を経験したので、ワクチン接種児と非接種児において臨床症状や家族内感染について比較した。患児数は2014/15年は65名(ワクチン接種児:27名 ワクチン非接種児:38名)、2015/16年は186名(ワクチン接種児:60名 ワクチン非接種児:126名)、ワクチン接種児の平均年齢は2才1ヶ月、 ワクチン非接種児の平均年齢は3才10ヶ月だった。臨床症状の比較はワクチン接種児が(平均最高発熱:38.0℃ 受診までの嘔吐回数:1.46回 受診までの下痢回数:2.03回 水様性下痢日数:3.36日)、ワクチン非接種児はそれぞれ(38.1℃、4.07回、3.82回、5.33日)、全身状態はワクチン接種児が(良好86% やや不良19% 不良1% 点滴0名 入院1名)、ワクチン非接種児はそれぞれ(30% 43% 27% 15名 4名)だった。また家族内感染はワクチン接種児から(2014/15:0% 2015/16:4.0%)、ワクチン非接種児からは(2014/15:29.1% 2015/16:31.7%)だった。以上より、ワクチン接種により発熱は軽減されないが、消化器症状(嘔吐、下痢回数、下痢日数)は明らかに軽症化が確認された。また家族内感染抑制にワクチンは極めて有効と判断された。

○「ロタワクチンがウイルスの流行と遺伝子型に与える影響について」

青木才一志

ロタワクチン導入により入院例の減少は報告されているが、一般外来では未だ流行が確認される。ワクチン開始後4年間に経験したロタウイルス腸炎からワクチンが流行規模と遺伝子型の変遷にどのように影響しているか検討した。また2015/16年については流行遺伝子型を同定し得たので今後の問題点について考えた。

ロタ腸炎患者数:2012/13は患者数114名中7名がワクチン接種者(1価:7名、5価:0名)2013/14は26名中2名(1価:2名、5価:0名)2014/15は65名中27名(1価:23名、5価:4名)2015/16は186名中60名(1価:57名、5価:3名)。平均年齢:2012/13(2才7ヶ月)2013/14(4才1ヶ月)2014/15( 2才5ヶ月)2015/16( 3才8ヶ月)であった。当院における2015/16の遺伝子解析結果は72例中70例がG2P[4] (97%) であった。以上より、ワクチン導入により一般外来のロタ腸炎患者の減少は認められなかった。また2015/16は過去には一度も主流とならなかったG2P[4]の流行が確認された。奈良県保健研究センターより2011年ワクチン開始後4年間の遺伝子型の変遷はG1P[8]⇒ G9P[8]⇒ G1P[8]=DS-1like⇒ G2P[4] と報告されており、今後G2株やG1変異型(DS-1like)の動向と2種類のワクチンの効果について継続的に監視が必要と思われた。

○「急性胃腸炎にリンゴジュース」の論文を読む。新たなエビエンスはガイドラインを変えるのか」

ガイドライン検討会 冨本和彦,中村 豊,伊藤 純子

Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial.(JAMA2016;315:1966-1974)を紹介し、その内容について批判的に検討した。

〈原論文の内容〉

【背景】急性胃腸炎に対して主に発展途上国における脱水予防の目的でElectrolyte Maintenance Solution(EMS)が勧められてきたが、先進国の軽症脱水症の児に対する有用性は明らかでない。むしろ先進国においては医療者が高価で味の悪いEMSにこだわるために、保護者の62%はEMSより点滴を希望し、また児の側もEMSを飲まなかったために点滴になるケースが多くなる。先進国では経口摂取水分は希釈リンゴジュースや本人の好む飲み物でもいいのではないか? 【対象と方法】Low riskの軽症急性胃腸炎患児:n=647を対象とした。年齢は6-60か月 (平均 28.3か月)で、441人(68.2%)は脱水がない。これらの児をランダムに2群に分け、EMS群(n=324)ではApple-flavored,sucralose-sweetened electrolyte maintenance solutionにて喪失分を補充する。一方Fluids As Torelated:FAT群(n=323)では通常の児のdietary pattern(Beverages with high content of simple sugars(ex.Half-strength apple juice),sports beverages)で喪失分を補充することとした。【結果】治療不成功例はFAT群16.7% に対してEMS群は25.0%(差-8.3%)であり、FAT群はEMS群に対して劣性ではなく(P<0.001)、むしろ優性(P=0.006)であった。7日以内の経静脈輸液についてはFAT群2.5%に対してEMS群9.0%と多く(差-6.5%:-11.6~-1.8%)、入院例もFAT群0.9%に対してEMS群は2.8%(差-1.9%:-5.4〜1.3%)であった。 一方、予定外の受診、症状の遷延、当初と異なる経口補液の指示、体重減少、脱水、嘔吐/下痢の回数についてはいずれも有意差はなかった。救急外来での経静脈輸液についてはFAT群0.9%に対してEMS群は6.8%(差-5.9%:-10.5〜-2.0%)であり、救急外来で児がEMSを飲まなかったために経静脈輸液が増加したことが示唆された。 【考察】これまで経口補水液が推奨された理由は、 1)急性胃腸炎受診児にEMSを用いたら、以後の予定外受診が少なくなった。 2)ジュースのような糖分の多いものでは浸透圧性下痢をきたす。3)一般のジュースではNaが少ないため水中毒の可能性がある。というものであった。 1)についての元論文では、予定外受診のNNTは16 (95%CI 8〜508)と大きく、また入院〜救急受診の数でみると影響はなかった、 2)についても、根拠となったValoisらのデータで、day1では確かにジュース群で下痢の頻度が高かったが、day2以後は不変で逆にジュース群では摂取カロリーが多くなるためか、体重増加が良好であった。今回の検討では下痢頻度は不変である。また、 3)についても低Na血症は稀であり、頻回の下痢によって塩分喪失が増大した重症下痢症の乳児に限られる問題である。近年先進国では重症Rotavirus感染症が減っていることから、先進国において水中毒が発症する可能性は極めて低い。今回の検討では6カ月以下の児は除外して検討しているため、乳児についてはFAT群のEMS群に対する優位性は不明である。しかし、少なくとも生後6か月以上の児については経口補水液推奨の理由はいずれも根拠がうすく、特に24か月以上の児では希釈リンゴジュースの利点が明らかとなる。多くの先進国では、軽症急性胃腸炎で脱水の少ない小児への希釈リンゴジュースや本人の好む飲み物は電解質維持溶液の代わりとなるだろう。

〈以上の論文に対しての議論〉

  1. 1)ブラインドの問題点 特に主要評価項目として主観的評価(入院〜経静脈輸液、嘔吐/下痢による予定外の受診)を入れた際には、家族の医療行動に直結する、患者家族や医師のブラインドがなされているかが最重要となる。児を再来させるか、さらに医師が受診した児を入院させるか、経静脈輸液を選択するかの判断には児の治療内容(群分け)を知っていることによって強いバイアスがかかる。Limitationの記載にもあるように医師のブラインドは一応されているが、家族はどうしても内容がわかるようになっており、児を再受診させるかどうかの判断には影響を及ぼす。
  2. 2)先進国の生後6カ月以上の児に限った報告であり、重症な胃腸炎が多く合併症も多い発展途上国や生後6カ月未満のものでは同一に論じられない。
  3. 3)経口補水液をPedialyte, Enfalyte, Gastrolyte, or Ceraとしているが、他の経口補水液では検討されていない。
  4. 4)対象児がどの程度経口補水液を飲んだのか、希釈リンゴジュースをどのくらい飲んだのかの記載がなく、アドへレンスが不明。

○ 特別講演「ワクチンの臨床評価に関する様々な研究デザインと統計解析手法:感染症発症と免疫学的閾値,クラスターランダム化デザイン,Ring vaccination, stepped-wedgeデザイン」

スタットコム株式会社 統計解析部 松尾富士男氏

  1. 1.感染症発症と免疫学的閾値の検討方法

    感染性病原体による疾病発症の予防に関係する,測定可能な特異的生物学的マーカーは,発症予防に対して免疫学的に相関のある,多くは病原体に対する特異的中和抗体として知られている。それらの測定値から,個人を発症予防可能かどうかを判断する指標として,「閾値」が用いられている。初期の研究における閾値の決定方法は,限られた観察データに基づいたものがほとんどであった。例えば,代表的なものには,ジフテリア抗毒素価(0.01-0.1 IU/ml),麻しん抗体価(120mIU/ml)などがある。しかし,これらは発症者と非発症者の測定値を並べて評価した閾値であり,信頼区間など統計的な側面は考慮されていなかった。近年,統計学に基づいた免疫学的閾値の推定方法がいくつか提案されている。Siberらは,Chang-Kohberger法を利用して,結合型肺炎球菌ワクチン(7価)の3つのランダム化比較試験から,侵襲性肺炎に対する抗体価の閾値(0.35μg/ml)を推定した。また,Chenらは,ランダム化比較試験を必要とせず,観察研究データに基づく新しい統計手法として,a:bモデルの利用を提案ている。彼らは,いくつかの観察研究データを用いて,これまで統計的な考慮がなされて来なかったワクチンの抗体価閾値について統計的な推定を試みている。今後,新しいワクチンが開発された場合には,常に免疫学的閾値の検討は必要となるため,統計学的な側面を考慮した検討方法は,より重要になると思われる。

  2. 2.ワクチン臨床評価とクラスターランダム化試験デザイン

    「個人」を単位として治療群にランダムに割り付ける試験(individual randomised trial;IRT)は,群間の交絡因子の偏りを最小化する方法として,ゴールドスタンダードになっている。これに対し,病院,学校,地域といった「集団」を割付の単位とした試験(cluster randomised trial;CRT)の利用が最近増えてきている。CRTは,ワクチンの領域では特別な意味を持っている。IRTではワクチンの発症予防効果(Vaccine efficacy; VE)について,direct effectとindirect effects (herd effects)を区別できず,特に大規模の比較試験では,VEが過小評価されることが問題とされている(Vaucher,2009)。これに対し, CRTではこれらを区別して解析することが可能である。一方,CRTを計画する場合,倫理的承認,個人の訓練,割付の盲検,登録率と交絡因子のベースラインバランスの保証などの検討事項に対応が必要とされている。またCRTは,IRTに比べ統計学的パワーが減少することが知られており,より大規模集団が必要となる。さらに,サンプルサイズの推定とデータ解析がIRTに比べ複雑であること,クラスター間の移動による脆弱性の懸念なども存在する。

    一方,倫理的な側面についても問題が指摘されている。2000年から2008年までに公表されたCRT論文からランダム抽出した300報のうち,77(26%)の論文において倫理審査の実施に関する報告がなされていなかった(Taljaardら,2011)。CRT試験デザインは,方法論の基盤整備が比較的ゆっくりと進んだ(Donnerら,2004)。このため,適正な計画,実施及び報告のためには,今後も議論を重ねる必要がある。

  3. 3.エボラワクチンのEfficacy評価におけるRing vaccination

    エボラワクチン(rVSV-ZEBOV,NewLink Genetics and Merck)の有効性を評価する第三相試験が,2015年4月から西アフリカのギニアで実施されている。この臨床試験には,天然痘撲滅に採用されたring vaccination(包囲ワクチン接種)に加え,クラスターランダム化比較試験(CRT)のデザインが応用されている。Ring vaccinationは,個々の発症者周辺の人々(リング)にワクチンを接種し観察することによって流行をコントロールする,感染症拡散防止の一つの方法として,1970年に天然痘の撲滅のために使用された。CRTとは、ランダム化の割付単位が個人ではなく,学校,地区,医療機関などの集団(クラスター, 塊)を単位として行われる比較試験。効果を見たい介入の目的が集団である場合に利用される。エボラワクチンの試験では,エボラウイルス病(EVD)発症者の接触者と更にその接触者で構成されるクラスターに対し,ワクチン接種をすぐに開始するクラスター(Immediate vaccination)と21日後に開始するクラスター(Delayed vaccination)にオープンラベルで1:1に割りつけた。割付は,可変ブロックを用い,地域と接触者数で層別ランダム割付した。主要評価は,検査によって確定診断されたEVDをイベントとしたハザード比から計算されたVaccine efficacy,副次には,間接効果を含むvaccine effectivenessの評価も計画されている。本試験では,1回の中間解析(O’Brien-Flemingのα消費関数を使用)が計画され,2015年7月末に結果がLancetでオンライン公開された。その結果は,vaccine efficacy of 100% (95% CI 74.7?100.0; p=0.0036)となり,IDMCの勧告で,試験は継続するが,ランダム化は終了し,以後はすべてのクラスターでImmediate vaccinationを実施することになった。

  4. 4.ワクチンプログラムにおけるIMPACT推定のためのstepped-wedgeデザイン

    ワクチンプログラムの有効性(IMPACT)を評価する方法として,単位期間当たりの感染症罹患率をワクチン導入前後で比較するクロスセクショナルデザインは有用だが,ワクチンの間接効果を推定することは出来ない。エボラワクチンの有効性を評価するために採用されたことで記憶に新しいクラスターランダム化比較試験は,この間接効果の推定が可能であるが,既に市場に導入されてるワクチンの評価には,倫理的な問題や実施上の制約等が懸念される。このような状況下でも利用可能な試験デザインとして,stepped-wedge クラスターランダム化比較試験が注目されている。Stepped-wedgeデザインは,クラスターレベルで介入時期をランダム化し,順番に観察期から介入期に移行する試験デザインで,その名称は介入時期が階段状の楔形をイメージすることに由来する。stepped-wedgeデザインが,ワクチンプログラムの有効性評価に最初に採用された事例は,Gambiaの新生児を対象とした慢性B型肝炎に対する血漿由来HBワクチンの有効性評価試験(1986年開始;GHIS)である(The Gambia Hepatitis Study Group,1987)。最終的にワクチン接種から30年以上経過した時点のB型肝炎ウイルスによる肝がん(HCC)の罹患予防効果を評価する見通し(2011年開始;PROLIFICA)と報告されている(Shimakawa,2014)。試験デザインが先行する一方で,必要症例数の算出方法や適切な解析手法の適用(クラスター内相関を考慮した解析手法など),報告形式などは,殆どの報告が不完全であり,近年整備されつつある(Hemming,2014)。2015年のISCB@Utrechtでの報告でも,Stepped-wedgeデザインの例数設計,解析手法の発表が多かった。市販後のワクチンプログラムの評価には様々な制約が存在することから,Stepped-wedgeデザインに対する期待は大きい。適正にワクチンを評価するための枠組みや統計的側面の検討が,今後も必要と思われる。

3日(日)

○「かかりつけ医について考える〜患者家族からのメッセージ〜」

松田健太郎

  1. 1.感染症発症と免疫学的閾値の検討方法

    【概要】

    小児科かかりつけ医制度に関わる、患者の受診実態や医療施設の申請の現状についての実態調査を行う。

    【背景】

    厚労省の推奨する、かかりつけ医制度の評価の一つとして、“小児かかりつけ診療料”の申請が可能となったが、このシステムが浸透については不透明な部分がある。また一方で、働く母親の増加、救急システムの整備、小児科辺縁領域への他科からの参入など、患者の受診動向が変わりつつある。我々小児科医を取り巻くこれらの現状の変化は、こどもの総合医である小児科医が、本当のかかりつけ医とはなんだろうか?ということを考える絶好の機会とも思える。

    【目的】

    1. 1)「かかりつけ医について考える」ために、先ず患者保護者の小児科受診実態を調査し、患者保護者のかかりつけ医選択についての意識を知る。
    2. 2)医師を対象とした「小児かかりつけ医診療料申請」に関わる実態調査を行い、開業医による、厚労省が推奨する「小児かかりつけ医制度」の浸透度の予測や解決すべき課題を見出したいと考えている。

    【対象と方法】

    福岡地区小児科医会では、平成17年に福岡地区小児科医会では、小児科受診実態に関わるアンケート調査を行っている。今回の検討では、前回の検討で使用したものとほぼ同様の質問用紙を用い、同様の形式(対象、施行・回収方法)で小児科受診の実態調査を追視する予定である。同意を得られた福岡地区小児科医院の医師と受診患者保護者をその対象とする。具体的な方法としては福岡地区小児科医会会員の開業医施設128施設で代表医師1名と各医院10家族を無作為に選択し行う。

    【予測される結果】

    患者のニーズが多様化していて様々な要因(就労する母親の増加や専門性の要望の高まり)により複数のかかりつけ医を持ったり、かかりつけ医を変更する家族の割合は増していると思われる。救急医療システムも10年前に比べると大幅に再編成され患者にとってはある意味便利になっていて、複数の受診歴がある患者の割合も大幅に増えているものと推測する。いわゆる小児風邪についても耳鼻科医の一般小児医療への参入が進んでいることも容易に想像できる。

    【議論・質問】

    (対象症例、質問用紙に関わる事項)本研究を通して得られるであろう最も重要な情報は、約10年間での医療事情の変化において、医療の受け手である患者保護者の意識変化ですので、質問用紙を用い、基本は同様の形式(対象、施行・回収方法)で小児科受診の実態調査を追視する予定である。但しネット文化などに代表される情報伝達に関わる社会的状の大きな変化や、大きく変わった予防接種事情の変化のみを追加選択肢や追加設問として組み入れていくのが妥当であろう、との結論に達しました。(タイトル変更)タイトルとしては「かかりつけ医について考える」〜平成28年度福岡地区における小児科受診、ならびに小児かかりつけ医診療料申請に関わる実態調査〜が適切ではないかと意見がまとまりました。

○「予防接種後副反応に関するサーベイランスシステム構築について」

神谷 元,砂川富正,西藤成雄

国内で認可され、接種可能となったワクチンの数は欧米並みになった。欧米諸国では副反応を報告するサーベイランスシステムとそれにより探知されるシグナルに対して早急に患者情報を収集し対応する対策班、因果関係を長期的に研究する専門家チーム、そしてシグナルにより得られた因果関係の仮説を証明するデータセットを用いた解析によりワクチン接種後の副反応事例に対応している。わが国でもシグナル探知の役割を担うサーベイランスは存在するが、そこで探知されるシグナルが副反応そのもののように扱われている。本研究では国内で探知された副反応のシグナルの因果関係を解析できるデータベースの構築を目的とする。具体的にはすでに機能しているML-flu-DBを基本とし、同DBに参加している医師に協力を仰ぎ、シグナルが探知された場合に副反応で生じた疾患の診断の有無、並びにその患者の予防接種歴の情報など、MLを活用して収集し、疫学的な手法から因果関係の真偽について検討する。今年度はML-flu-DBにすでに参加している医師の間で試験的な情報収取を実施する。そこで認めた課題や問題点などを改訂しながら、最終的には外来小児科学会加盟医師の協力を得てより大きく正確なデータセットを構築し、副反応の因果関係に関して疫学的に判断を下せる環境を作る予定である。

○「ビタミンD欠乏状態にある母乳栄養児における適切なビタミンD補充の検討」

冨本 和彦

母乳栄養児ではVD欠乏が起こりやすいが、特に日照時間の短い北日本ではその傾向が顕著であると想定される。八戸地域において1-6月に当院を受診したほぼ完全母乳栄養の3-4ヶ月児のうち、25OHD値が20ng/ml未満であったものは74/80例(92.5%)であり、10ng/ml未満であったものは62例であった。

VD補充量の検討では、これらの児49例をランダムに160IU/dayと400IU/day補充群に割り付けし、4週間投与後の25OHD値を検討した。25OHD値の変化は160IU群では投与前7.44±2.97→26.24±8.29ng/mlに、400IU群では7.42±2.72→30.21±7.28ng/mlと変化したが、その差は有意ではなかった(p=0.105)。

現時点で保険適応のない25OHD低値を予測するパラメーターとしてCa,P,PTH,ALP,X線写真を検討した。重回帰分析にて有意に関連したのはPTH(p=0.0002)のみであり、感度特異度曲線からはALP 899U/Lをカットオフ値として感度、特異度0.728であった。

今回は八戸におけるVD欠乏を調査したが、VD欠乏状態は著しく「北日本の冬期間」 だけの現象とは考えにくく、通年調査や他地域での検討を進める必要がある。また、4週間後の25OHD値では、現時点で両群の有意差はみられないがサンプルサイズを各群44例とすれば有意となりうる。

討議では、VDを投与して臨床的に重要な因子が何かを考える必要があり、むしろ投与後に何例が25OHD値20ng/ml以上を達成できたかをみたほうがよいとした助言が出された。

「咳止めの効果を調べる」 

西村 龍夫

多くの乳幼児に投与されている咳止め(アスベリン?)の効果は,動物実験のみを根拠にされたもので,コントロールスタディがない.その効果を調査してみるために,今回のstudyを企画した.アスベリン?投与群と非投与群で,初診時と2日後に咳嗽症状がどう変化するかを調査する.対象とする患者を軽症群だけにすること,どのような重症度の咳嗽患者を調査対象にするのかを明確化すること,初診時の咳嗽症状についての医師による客観的な指標や,咳の強度をどのように段階化するのか,保護者の負担感を調査に加えること等が提案された.さらに,電話での経過調査での聞き方や症例のランダム化へのアドバイスがあった.これらの点を再考して,次回の検討会へ再度提出する予定である.

○「初診時にムンプスの可能性を疑った症例の診断について」 

橋本 裕美

ムンプスの診断は。2日以上の耳下腺腫脹持続が原則だが、救急外来などで初診のみでムンプスと診断されるケースがある。救急でムンプスと言われた例でその後当院にて血清検査により非ムンプスと確認できたケースを示した。ムンプスの流行はワクチン普及前に比べると減少しており、安易な診断はかえって実際には抵抗力を持たないのにムンプスワクチンを受けそびれる恐れがある警告を発表したいと考え、当院で経験した症例を整理準備中である。臨床医が日常診療で得たデータでは耳下腺腫脹期間不明例が多い、保険医療担規則に沿うと診療上必要な場合以外の検査が制限されるなど不十分なデータとなりやすい。これでは、原著論文は難しいかもしれないが、有益な情報を学会発表する意義は大きいのではないかと開業医が行いやすい調査研究に関しても問題提起を行った。ムンプスの診断の困難さに関して議論され、データの整理に関してはフローチャートで整理してはと御教示いただいた。

○「RSウイルス2016-2017年調査のお願い」

齋藤 玲子,田邊郁望,日比野亮信,菖蒲川由郷

2015-16年シーズンにおけるRSウイルス調査の分子疫学的解析と、臨床的な特徴について報告した。

  1. @2015-16年シーズンのRSウイルスのサブグループや遺伝子型、地域流行特徴
    外来小児科リサーチ委員会の先生方を主として、本邦9県(北海道、青森、新潟、東京、静岡、三重、滋賀、熊本、沖縄)にてRSVの調査を行った。その結果、A型79件、B型98件がPCRで検出された。地域別にみると、A型が優勢な県、B型が優勢な県がそれぞれ半数ずつあった。G蛋白遺伝子型ではA型ON1(43株)とB型BA9(28株)で9割以上をしめた。少数ではあるがA型NA1も見られた(2株)。県別にRSV流行曲線を書いたところ、ほとんどの地域で10-12月に流行のピークがみられたが、熊本と沖縄のみ1月以降もRSVが検出された。国の感染症発生動向調査(IDWR)のRSウイルス患者数と比較したところ、流行の状況はおおよそ一致していた。樹形図解析上は各地で採取されたON1やBA9の遺伝子は、ほぼ同一で地域差はなかった。
  2. A迅速診断キットの感度・特異度
    調査に使用したキットについて、RSVのM蛋白リアルタイムPCRに対する感度・特異度を検討したところ、感度93.4%、特異度は90.4%であった。ROC曲線を用いてキットのカットオフ値を検討したところ103.36copy/μLであった。
  3. B遺伝子型別臨床症状
    初診時の症状を遺伝子型A型ON1(34例)、B型BA9(24例)で比較したところ、両遺伝子型で差は無かった。平均年令はそれぞれ1.1才で、初診時に38度以上の発熱が見られた症例が約半数であった。ほぼ全ての症例で咳嗽、鼻汁をみとめ、喘鳴が7割、食欲不振が約半数にみとめられた。呼吸数の増加は7割の症例にみとめたが、SpO2の低下(94%以下)はON1で11.8%、BA9で0%とややON1が多かった。一年以内の本人のRS既往感染は6−8%に、家族の感染は4割程度に認められ、同胞の先行感染が最も多かった。中耳炎の合併は5%程度と少なかった。
  4. CRSウイルス動態
    初診と再診の2回受診した児の鼻腔検体中のウイルスゲノム量を、リアルタイムPCRにて計測しウイルス量の減衰を年齢別に比較した。発症日から換算しゲノム量が10copy/μL以下になる平均日数を算出したところ、6.8±3日であった(n=65)。年齢別に解析したところ6ヶ月未満児で排泄期間が長い傾向にあったがLog rank検定でほかの年齢群との有意差は無かった。その他、型別及び遺伝子型別に検討を行ったところ、A型全体とON1型で6ヶ月未満児の排泄が長い傾向があったが、症例数が少なく有意差は見られなかった。B型、BA9型では年令による一定の傾向は見られなかった。
  5. D2016−2017年シーズン調査のお願い
    質問1.入院中の患児の経過表をどうするか。
    A.保護者に依頼し可能であれば記入してもらう(入院になった児と外来の軽症児の経過を比較するため。)
    質問2.キット陰性でリアルタイムPCR陽性の児は経過表がなく、ウイルス量で経過をみることができないと思われる。パラインフルエンザ1,2,3とHMPV感染が考えられるのでその経過も追えると良い。
    A.陰性の児も可能な限り経過表を書いてもらう。
    2016−2017年シーズンについても調査の継続を依頼し、承諾を得た。 その際に討議した内容は以下の通りである。
  6. 質問3.中耳炎は、7−8割はあるはずなので全経過を追えるようにした方が良い。
    A.初診時症状の欄に中耳炎を入れるのではなく、入院の欄の近くに中耳炎についての設問を設ける。
    質問4.保護者に依頼する経過表の症状スコアのつけかたがわかりにくい。
    A. つけやすいように改善する。
    質問5.感度特異度に95%信頼区間を入れてほしい。ROC曲線にもAUCをいれてほしい。陽性的中率、陰性的中率も入れてほしい。
    A. 解析実行する。

連絡先:〒833-0027福岡県筑後市水田991-2杉村こどもクリニック杉村徹
FAX: 0942-52-6777, E-mail: sugimura@kurume.ktarn.or.jp
2016.09.27
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