日本脳炎ワクチン接種についての緊急アピール

日本外来小児科学会 予防接種委員会

会員各位

 ご承知のように日本脳炎ワクチンに関して、国は2005年5月に現行のワクチンによる定期予防接種の積極的勧奨は行わないよう市町村に勧告しました。その理由として、因果関係は不明なもののマウスの脳を用いた現在の日本脳炎ワクチンを接種した後に重症の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発生した事例があったことから、安全性についてより慎重を期するためとしています。この時点ではVero細胞を用いた組織培養による新しい不活化ワクチンが開発され、国内2社から認可申請が提出されていたため、「よりリスクの低いと期待される組織培養ワクチンが開発中で、その供給体制が整ったところで勧奨を再開する予定」と述べ、早期の再開を示唆していました。しかしながら実際には、新ワクチンの認可は、現時点で数年先まで期待薄な状況です。この勧告には、希望する者に対しては接種を行って差し支えない旨も記されていましたが、結果的に2005年以降3〜4歳での接種率が激減し、ヒトの抗体保有状況も2006年度の0〜4歳群でこれまでにない低い割合になっています。また、1991年以降、5歳未満の乳幼児の患者は報告されていませんでしたが、2006年9月に熊本県で3歳児が1例報告されています。

 国は2006年8月末の通知により、法に基づき予防接種を受ける機会を引き続き確保するよう市町村に依頼し、2007年5月には「日本脳炎ワクチン接種に係るQ&A」を一部改訂し、都道府県に対して、日本脳炎ワクチンの供給調整を行い、不足している場合には速やかに報告することも指示しています。また、最近では「蚊に刺されないように」という不可能に近い注意を喚起するポスターを作成し、けれどもワクチン接種に関しては、自らは直接勧奨せずに市町村へ問い合わせるようにと促すのみでした。

 ところが、いざ我々かかりつけ医や自治体が、自らの判断で現行ワクチンの接種を勧めようにも、上記のような状況が続いたためにワクチンメーカーは生産を縮小・廃止し、現在ワクチンは入手が困難です。1期初回1回目だけでも毎年100万人以上の対象者がいるはずですし、それが現在、蓄積されていますので、実際のワクチン接種が必要な感受性者の数は、はるかに多くなると思われます。厚生労働省は、8月6日の時点で本年の出荷済みが38万本、在庫が7万本、今後の供給予定が12万本足らずと都道府県に連絡していますが、到底需要を満たすものではありません。このように、接種を受けたくても受けられない状況になっているにも関わらず、積極的勧奨の中止期間中に対象年齢を過ぎた者に対しても、国は救済措置を取らないことを明言しています。換言すれば、希望する者には接種を受けられる体制を維持していることをことさら強調し、受けられずに感染する事態が発生した場合の、責任の所在を明確にしていません。

 日本外来小児科学会予防接種委員会では、役員会の了承のもと、日本小児科学会に対し「日本脳炎の定期予防接種の経過措置に関する要望書提出のお願い」を提出し検討していただきました。しかしながら、本年2月の予防接種・感染対策委員会で、時期尚早との判断がなされたのかもしれませんが、今回は要望書の提出が見送られました。

 本委員会では、まず会員の皆様に日本脳炎ワクチンに関する現状を認識していただき、日本脳炎の流行阻止のため行動することが重要と考え、別紙「アピール」を採択しました。上記の件について、皆様のご理解ならびにご協力をいただくよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2007年8月

日本外来小児科学会 予防接種委員会

委員長 永井 崇雄



まず、あなたの外来で日本脳炎ワクチンの接種を勧奨しよう

日本外来小児科学会 予防接種委員会


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2007.8.29