会長あいさつ

2024年 年頭のご挨拶

2024年は能登半島地震、さらには羽田空港航空機事故と多難な幕開けとなりました。被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の1日も早い復旧・復興を祈念いたします。

さて、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症はあらゆる人たちに多大な影響をもたらし、こどもたちもその例外ではありませんでした。生活リズムの変調、スクリーンタイムの延長、ストレスの増加、不登校児童生徒の増加の加速などが報告されており、5類移行後もその影響は引き続いています。

このような子どもたち、保護者の抱える課題の変化に対応するため、外来診療のありかたを見直す動きが進んでいます。予防接種で来院した際に、ワクチンを接種するだけでなく、年齢に応じて活動や生活の状況を話題にする、日本脳炎や二種混合ワクチン、HPVワクチンは、年齢が進み受診する機会が減る小・中学生と会話をする貴重な機会でもあります。「かぜ診療」も子どもたちとのかかわりをもつ機会と捉えることができます。また、生後2か月からの予防接種のための月1回の来院は乳児期早期から継続して子育てを見守る伴走型支援実現の格好の機会です。

令和5年度補正予算から生後1か月児健診と5歳児健診が国の健康診査支援事業として地方交付税措置され、4(3-6)か月児健診、10(9-11)か月児健診と同様、国の補助対象となりました。健康診査の指針については、研究班や四者協(日本小児医療保健協議会)から提示されますが、その実施は日々外来で向き合っている第一線のかかりつけ医の役割です。1か月健診は原則として個別健診とされ、留意事項として「健康診査の結果等の情報の活用などにより伴走型相談支援の効果的な実施につなげること」とされ、生後2か月からの予防接種の機会を活用した子育ての見守りとの継続・連携が示唆されています。5歳児健診は原則として集団健診とされ、留意事項には「発達障害等(発達障害等の疑いを含む)と判定された幼児について、就学前までに適切に療育につなげることができるよう、都道府県とも協力しながら、必要な支援体制の整備を行う」とされています。地域の医療資源によっては個別健診で実施されることも考えられ、健診の形式にかかわらずその目的が達成される地域の仕組み作りが求められています。

日本外来小児科学会の大きな特徴である、メディカルスタッフとともに外来診療を行う姿勢、受付事務、看護師をはじめすべての職員がアンテナとなり情報を収集することで、子どもや家族の理解を深めることができます。「メディカルスタッフとともに外来診療を創る」本学会の姿勢は、今求められているバイオサイコソーシャルな視点から子どもと保護者、子育てを支える意味で大きな力を発揮すると信じています。

日本外来小児科学会では6つの部会の下に18の委員会が、および独立して倫理委員会が設置されています。委員会によってはさらに複数の検討会等に分かれて活発な活動を行っています。求められるものが大きく変化しようとしている今、第1回目の研究会から33年目となる日本外来小児科学会としても、柔軟に対応できる活動を目指していきたいと考えています。複数の小児科関連団体の中で最も新しい、そして最も現場に近い学会としての特徴を活かし、日々の診療・活動での気づきを共有するために参加者、会員が自ら発信する学会を目指しています。小児医療に関わる多くの皆様のご参加をお待ちしています。

2024年1月
一般社団法人日本外来小児科学会 会長
稲光 毅


会長写真

会長就任のご挨拶

 2023年9月8日、第32回年次集会前日に開催された理事会において会長に選任されました稲光毅です。
 前任の吉永陽一郎会長の残任期間1年の任期ではありますが、その責任の重さを強く感じるとともに、身の引き締まる思いです。会員の皆様のご支援をいただきながら、学会の発展に精一杯努めてまいる所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

 日本外来小児科学会は、徳丸實、五十嵐正紘両氏の出会いから始まり1991年に発足しました。当初、学会を代表する会長はその年度の年次集会を主催する理事として1年ごとに交代していましたが、学会運営の継続性などを考え2002年から理事長職を置くこととなりました。初代理事長は徳丸實、その後、五十嵐正紘、江上経誼、鈴木英太郎、一般社団法人となった2016年1月からは会長として横田俊一郎と、理事・監事として学会の前身である研究会の立ち上げから中心的にかかわってきた錚々たる方々が理事長・会長職を務めてこられました。それが、前任の吉永会長は2006年から第5期の理事として、私は2009年から第6期の理事として学会運営に関わる立場となった、学会の創生期にかかわってない第二世代の会長に移行する最初の役をお引き受けすることになりました。会長就任にあたり、改めて設立時から今日に至る歩みを振り返り、これまでの学会の歩みを糧に会が発展していく、そういう方向に目を向ける時間と考え、1年間の任期を全うしたいと考えています。

 本年の第32回年次集会のテーマ、および同名の特別シンポジウム「次世代へのバトン」はまさに時宜を得たものであり5名の方のご講演から、本会にかけた新鮮で熱いそして強いメッセージを受け取ることができました。また、研究会発足の8年目には会誌が創刊され、読み返すことにより創生期の熱い、突き動かされる思いを読み取ることができます。改めて、日々の臨床の中に発する疑問を解決し医療の向上に資する、日常診療に根ざした総合の視点からの研究の重要性、その発表の場を提供する年次集会、地方の研究会、学会誌の役割を認識しました。

 現在、本学会には6つの部会の下に18の委員会が、および独立して倫理委員会が設置されています。委員会によってはさらに複数の検討会等に分かれて活発な活動が行われています。最近では教育部会内の、医学生・若手医師支援委員会、生涯教育委員会に作られた自己学習プログラム検討会などが活発に活動しており活動の幅が広がっています。また、当学会の大きな特徴として、メディカルスタッフの参画があります。多職種が参加する年次集会はその象徴でもあります。一方で、規模の拡大・会員数の増加に伴い設立時からの理念である、すべての会員が「ただ聴いて帰るだけでなく、自ら発信する」学会であることが難しくなってきています。

 本学会では、日々現場に向き合っている皆様が主役です。皆様にはそれぞれが情報を発信する・情報を共有する立場でご参加いただくことを願っています。本学会は皆様の研究、発表、さまざまな活動を支援いたします。引き続きまして日本外来小児科学会をよろしくお願いいたします。

2023年9月
一般社団法人日本外来小児科学会 会長
稲光 毅

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