会長あいさつ

 長年総務として日本外来小児科学会を支えてきた吉永陽一郎副会長が2022年8月26日開催の理事会にて新会長に選任され、一般社団法人へ移行した2016年1月から6年間会長を務めた横田俊一郎前会長を引き継ぎ、新体制がスタートしました。しかしながら就任前の患いから吉永会長は一時的な療養が必要となり、2023年2月5日の理事会において、副会長である私が会長代行を務めることとなりました。会長代行の立場からご挨拶申し上げます。
 2020年に始まった新型コロナウイルス感染症は、すべての年齢層のあらゆる職業の人たちに多大な影響を与え、こどもたちもその例外ではありませんでした。まだ小児の感染者がほとんどない流行のごく初期から、全国の学校において一斉休校が始まりました。学校が再開されてからも、修学旅行や体育祭のみならず、入学式、卒業式も行われないなど、子どもたちの日常は大きな制約を受け、生活リズムの変調、スクリーンタイムの延長、ストレスの増加など、心身への影響が報告されています。
 小児科の外来診療も大きく翻弄されました。こどもの新型コロナウイルス感染者がほとんどなかった2021年までは、新型コロナウイルス感染症以外の感染症も激減し外来患者数は著しく減少しました。しかし、これは少子化の進行により遅かれ早かれ外来小児科が直面することになる事態が早くやってきたと捉えることもできます。
 小児科外来診療のありかたを見直す動きが進んでいます。予防接種で来院した際に、ワクチンを接種するだけでなく、年齢に応じて育ちや生活状況を話題にする、特に生後2か月からの予防接種のための来院は乳児期早期から子育てを見守る格好の機会です。また、日本脳炎や二種混合ワクチン、HPVワクチンは、年齢が進み受診することが減る小・中学生と会話をする貴重な機会でもあります。いわゆる「かぜ診療」も子どもたちとのかかわりをもつ機会と捉えることができます。
 日本外来小児科学会の大きな特徴として、メディカルスタッフの参画があります。メディカルスタッフとともに外来診療を行う姿勢は、子育てを見守る上で大きな力を発揮します。受付事務、看護師をはじめすべての職員がアンテナとなり情報を収集することで、子どもや家族の理解を深めることができます。多職種が参加する年次集会はその象徴でもありますが、他の小児科関連学会と比較した際の大きな特徴として、「メディカルスタッフとともに外来診療を創る」は本学会の大きなテーマの一つであると考えています。
 日本外来小児科学会では6つの部会の下に18の委員会が、および独立して倫理委員会が設置されています。委員会によってはさらに複数の検討会等に分かれて活発な活動を行っています。求められるものが大きく変化しようとしている今、第1回目の研究会から32年目となる日本外来小児科学会としても、柔軟に対応できる活動を目指していきたいと考えています。
 複数の小児科関連団体の中で最も新しい、そして最も現場に近い学会としての特徴を活かし、日々の診療・活動での気づきを共有するために参加者、会員が自ら発信する学会を目指しています。小児医療に関わる多くの皆様のご参加をお待ちしています。

2023年3月
一般社団法人日本外来小児科学会 会長代行
稲光毅

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